マツダの今を知るグッドレポート(by金子浩久氏)!やはりマツコネはアキレス腱?
- レポートはCX8のものだがCX5を含めたマツダの車づくりの現状が良く理解できる。技術と商品の違いも的確でこれならマツダ関係者も改めて認識を深めることが出来る。
- 今やマツダのアキレス腱になってしまったマツダコネクトに総称されてしまう車内情報システムにも適切な視点からしっかり厳しく言及している。
- メカ系を磨けば磨くほどIT系のお座成りな対応が目に付くという矛盾。好きな技術に注力してもそれは商品づくりではないということを改めてマツダ経営陣、開発責任者はりかいすべき。
- 車載ITについてじゃ一切トヨタとの提携の成果を待つ姿勢ではマツダ(広島)はトヨタの生産部門の一つに没落しかねない。
- 是非オリジナルサイトで全文通読して欲しい。更には氏の関連記事にも目を通して欲しいと思う。
https://dime.jp/genre/498945/
3列シート7人乗りのマツダのSUV『CX-8』の完成度をチェック(2018.01.15)
■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ
マツダの新型SUV『CX-8』の最大の特徴は、3列シートを備えて定員が7人乗りになることだ。少し前に、マツダはミニバンからの撤退を発表している。現在販売してい『MPV』『プレマシー』『ビアンテ』などの新型を開発せず、新たなミニバンも生み出さないことを明らかにしたのだ。英断だと思う。
ミニバンや軽自動車などは、コモディティ(実用品)としてメーカーごとの製品の特徴を出しにくかったり、仮に出したところでそれが評価されて販売増につながりにくい。また、そのままでは輸出もしにくい。それならば、無理に自社で開発せずに、他メーカーから都合してOEMとして販売した方が合理的かつ効率的だ。OEM化の流れは、すでにすべての自動車メーカーの間で広まっており、マツダも軽自動車の多くをスズキから融通してもらっているくらいだ。
https://dime.jp/genre/498945/2/
■機械として優れているか? ★★★★(★5つが満点)
ミニバンに取って代わるクルマとしても『CX-8』の役割は大きいのではないか。実際、ミニバンと較べるまでもなく『CX-8』はキビキビと良く走る。試乗した2.2Lのディーゼルは力たっぷりで『CX-8』を小気味良く加速させる。ハンドリングもシャープで、「ズームズーム」のテレビCMの通りに機敏に走る。
車内も広い上に、革シートもゴージャスに見えたりもする。後席へ移動しやすい6人乗り仕様も用意されている。内外デザインも、良く吟味されていてカッコいい。メディア向け試乗会で、自分ひとりで借り出して首都高速と一般道を走った分には『CX-8』の印象はとても良かった。
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■商品として魅力的か? ★★★(★5つが満点)
しかし、好印象を抱いた『CX-8』を返却しながら、ふと、立ち止まってしまった。「シートが3列あるということは、自分がハンドルを握ろうが握るまいが、大勢で乗る機会が多いということだ? ドライバーひとりで乗ることよりも、大勢で乗ることを想定している。それって、どんな時だろう?」通勤通学の送迎などもあるだろうけれども、レジャーで最も活躍するのではないだろうか?
ゴルフやスキーなどのスポーツもあれば、キャンプやトレッキングなどのアウトドアアクティビティもある。近場もあれば遠くにも行くだろう。『CX-8』に乗ることが目的ではない。CX-8に乗って、遊びに行くことが目的だ。「だったとすると、もう少しユッタリとした走りっぷりの方が良くはないだろうか!? こんなにキビキビしていては、ドライバーは“走る歓び”を感じるのかもしれないけれど、乗せられている方はタマラない」
キビキビ走るクルマは反応が直接的だから、揺さぶられたり、突き上げられたり、ショックが直接的になってしまう。『CX-8』はその傾向が強い。ましてや、ゴルフやスキーの帰り道だったらドライバーだってツラいだろう。キビキビじゃなくて、ゆったり、マッタリした走り味じゃないと疲れた身体にムチ打たれるようなものではないか。ドライバーの「運転する歓び」など二の次、三の次で構わない。
遊び疲れて家路を急ぐ場合にありがたみが大きいのが、運転支援デバイスのアダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンキープアシスト(LKAS)である。この連載コラムでも最近、頻繁に登場するこれらふたつの運転支援デバイスは高速道路や自動車専用道での事故を未然に防止し、ドライバーへの負担を減らす。僕の経験では、これらふたつを使うと疲れが全然違う。
『CX-8』にも2つは装備されているのだけれども、その作動状況を示すインジケーターがとても小さいのが残念だ。ACCは前車がいなくなっても設定スピードで走り続けるだけだが、LKASは白線を読み切れなかったり、カーブがキツかったりすると作動が解除されるから、インジケーターはとても大事なのだ。一番大事かもしれない。
だから、ACCとLKASの表示は大きければ大きいほど良い。ボルボやBMW、ランドローバー、プジョー、レクサス、トヨタのカムリなどはそれに気付いて大きく表示されるようになっている。『CX-8』は小さ過ぎる。
ヘッドアップディスプレイにはそれよりは大きく表示されるが、前述の通り、サングラス越しではまったく使いものにならなかった。針のある、大きなスピードメーターとタコメーターを残す必要性はないのだから、一刻も早く液晶メーター化して、ACCとLKASを切り替え式のマルチディスプレイの中で大きく見せるようにするべきだ。
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コネクティビティについても、考慮されたあとが伺えない。CarPlayもAndroidAutoも装備されていないし、車内がWiFiホットスポットにもなっていない。2列シートのクルマならいざ知らず、レジャーの帰り道に3列目に乗った人が車内で最初に何を行うだろうか?
スマートフォンを取り出して、スキーやゴルフ中に撮った画像をSNSにアップしたり、帰りの晩御飯をどこで食べるか検索したり、スマートフォンやタブレット端末がフル活用されるだろう。車内をWiFiスポット化しているクルマは今は珍しくないのだから『CX-8』のようなクルマこそ率先して行ってもらいたかった。
キビキビ走ると気持ち良い時もあるけれども、このクルマではそうした場面は少ないはずだ。このクルマの使い途を考えてみれば、他のマツダ車と同じように開発しては、せっかくの3列シートが活きてこない。ズームズーム一本槍ではないクルマも使い途もあって、『CX-8』はそちらではないか。
『CX-8』はマツダらしくマジメに造られているけれども、マジメさを向ける先がちょっとズレてしまっている。せっかくの3列SUVなのに、その想定ユーザー像と使用例を顧みることなく、マツダ得意のスポーツカーやスポーツセダンを造るような姿勢で造られてしまっている。とてももったいないと感じた。
■関連情報
http://www.mazda.co.jp/cars/cx-8/
文/金子浩久
モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。
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